今年のフジロック、何が起きる?第1弾発表をチェック
Text 粉川しの

FUJI ROCK FESTIVAL ‘26の第1弾ラインナップがついに発表された。第1弾にして既に全66組と、フェスの全体像を把握するには十分なボリュームで、しかもフジロックの「らしさ」と「意外性」がデュアルに示された、大充実の布陣だと言っていいだろう。ここでは今年のフジロックのテーマと呼ぶべきものを、要注目のアーティストと共にいくつかピックアップしてみたい。

The xx – On Hold (Glastonbury 2017)

まずはもちろんヘッドライナーから。

これぞ「らしさ」と「意外性」の3組ではないだろうか。MASSIVE ATTACKThe xxはファンの事前予想でも頻繁に名前が上がっていたアーティストで、ノクターナルで没入型のダンス・ミュージックという共通項を持つ両者が、今年のフジの主要なムードを醸成していくことは必至。マッシヴは2010年にヘッドライナー以来16年ぶりのフジロック、かたやThe xxはレッドマーキー(2010)、ホワイト・ステージ(2013)、グリーン・ステージ(2017)と、フジと共にスケールアップしてきたバンドで、4回目の出演にして遂にヘッドライナーに辿り着いた。2026年はマッシヴにとっては久々の再始動年、The xxにとっては9年ぶり(!)の新作が予定されている、まさにジャストなタイミングでの揃い踏みだ。特にThe xxはソロ活動でそれぞれ異なる極に至った3人の再集結によって、全く新しいバンド力学が生じさせる彼らを、いち早く目撃できる場になるだろう。

MASSIVE ATTACK – Angel

一方で、驚きをもって迎えられるだろうヘッドライナーがKHRUANGBINだ。何しろ彼らの前回フジは初出演の2019年で、ステージはフィールド・オブ・ヘヴンだった。そこから一気にヘッドライナーまで駆け上がっての今回だ。ただし、こうした「突然のヘッドライナー」は、昨年のフレッド・アゲインとヴルフペックという初来日&初ヘッドライナー組の大成功によって、私たちは既に「アリ!」だと気づいている。しかもクルアンビンのインストをルーツに持ち、クロスオーバーを極めたファンキーでサイケデリックな音楽性は、後述する今年のフジのテーマの一つとシンクロしている。ステージ分けによっては他のアクトと共にフェスに大きなケミストリーを生み出すパフォーマンスになるはずだ。

KHRUANGBIN – Full Performance (Live on KEXP)

ということで、ここからは5つのテーマ毎に注目アクトを紹介していきたい。まず最初にピックアップするテーマは「オルタナティヴの今」。新旧様々なオルタナティヴ・ロック、ポップのアーティストが名を連ねているが、今年はとりわけ同時代性をビビッドに感じさせる、今こそ絶対に観るべき2020年代のトップランナーが揃い踏みしているのだ。筆頭はもちろんTURNSTILE。フジには2年ぶりというショートスパンでの再出演だが、その間に彼らはグラミーで「最優秀ロック・アルバム」を受賞、ポップ全盛の時代に超現役のハードコア・バンドがメインストリームに名を刻んだことは、ロックのニッチ化の時代にあって強烈なカウンターパンチだったのは間違いない。ターンスタイルはまさに現行オルタナティヴの震源地に立つバンドだし、彼らのステージの凄さについてはフジロッカーが誰よりも知っているだろう。

TURNSTILE – NEVER ENOUGH (Glastonbury 2025)

一方、シンガーソングライターとして現行オルタナティヴを牽引しているのがMITSKIだ。日本には彼女のブレイクがイマイチ伝わっていないが、想定外のTikTokヒットも後押しし、今の彼女はラナ・デル・レイやテイラー・スウィフトを聴いている層にも訴求するハイブリッドな存在に進化している。前回来日も素晴らしかったが、あれから7年、彼女のエモーショナルな歌声の広がりは別物になっているはずだ。そして、オルタナティヴ・ポップの「これから」を指し示すTOMORAのステージは、間違いなく2026年フジロックのハイライトのひとつになるだろう。ケミカル・ブラザーズのトム・ローランドとオーロラによるこのプロジェクトが、UKダンスのレジェンドとノルウェーが生んだ天才シンガー両者の可能性を大胆に広げるものになることは、二人のアイデアが野放図に駆け巡るアシッドでパンクな「RING THE ALARM」からも明らか。マッシヴとThe xxがダークでミニマルなエレクトロニックのムードを作る一方で、トモーラのハイパーでマッシヴなエレクトロニックは最高のスパイスになるのではないか。

TOMORA – RING THE ALARM

次に挙げたい今年のフジロックのテーマは「ジャンルレス、ボーダーレスな技巧派の狂宴」、とでも呼ぶべきもの。前述したクルアンビンとリンクするのが、本テーマに該当するアクトたちだ。米出身のベテラン・バンド、LETTUCEのジャズ・ファンクから、トロント発のインスト・トリオ、BADBADNOTGOODのジャズとヒップホップのクロスオーバー、ロンドン出身のKOKOROKOによるアフロ・ジャズ……と、今年は特にジャンルレスなリズムの実験場と化しているモダン・ジャズ、そしてインストゥルメンタルを強みとする凄腕ライブ・バンドが勢揃いしている。
中でも注目が、ロンドン出身の新星YUUFだ。昨年Ninja Tuneと契約したばかりの彼らもまたインスト・バンド。サイケデリックやアフロビート、クルアンビンさながらのサーフもあれば、フラメンコやラテンミュージックもあり、さらにはイタリア映画音楽やヒーリング、スピリチュアリズムも感じさせる彼らの、ロンドンの多文化共栄を地でいくサウンドは、今年を振り返った時に裏ベスト的なポジションで語られることになる可能性大だ。

YUUF – Alma’s Cove -Live In Preveli Gorge, Crete

3つ目のテーマはズバリ「ネオ・グローバル・ポップ」。邦楽の枠を超えてアジアから世界へ、そしてR&Bやポップスの領域で世界レベルに達しながら、長らくグローバル・ポップの辺境とされてきたアジアのアイデンティティも守り抜くニュータイプ、Fujii KazeXGのフジロック初出演は、30年に及ぶフジの歴史の中でも巨大なメルクマールとして後世に語られていくことになるはず。
XGは昨年コーチェラ・フェスティバルに出演、そしてFujii Kazeは今年出演が決定と、彼らはまさに地球を舞台に飛び回り、グローバルなサイクルでフェスにも出演しているアーティスト。それを思えば、アーティスト、オーディエンス共に多国籍を常としてきたフジロックと、実に相性のいい日本出身アーティストだと思う。

Fujii Kaze Stadium Live “Feelin’ Good”

ここからは少し駆け足でご紹介。4つ目のテーマは「女性が牽引するインディーポップ」とでも言うべきか。今年も前述のMITSKIを筆頭に数多くの女性アーティスト、及び女性がフロントパーソンを務めるバンドが出演。中でもARLO PARKSJAPANESE BREAKFASTTHE BETHSSNAIL MAILSORRY …etc.、それらのアクトの多くが今年のフジにインディーの牙城を築いている状況だ。

Japanese Breakfast – Be Sweet (Glastonbury 2025)

そして最後5つ目のテーマは「サイケデリックの世界地図」。2020年代以降のフジロックはラインナップを含め、より意識的にマルチカルチャーなフェスへと舵を切っていったわけだが、今年もALTIN GUN(トルコ&オランダ)SON ROMPE PERA(メキシコ)TINARIWEN(トゥアレグ族)他、注目アクトが目白押し。中でもこの3アクトに共通するのはサイケデリックであり、サイケと一言で言っても国や文化、風習、バックグラウンドが違えば、全く異なる音の曼荼羅を描くものになるはず。そしてその違いを旅するように体験できるのが、フジロックの醍醐味なのだ。

Altin Gun – Full Performance (Live on KEXP)